今年の○○ in 2017

すでに2018に入ってしまいましたが、恒例の「speak alone in 2017」です。
まず2016年の大晦日にも書いたように、2017年は多忙な年となり、多くの人によって支えられた一年でした。新しい人たちとの出会いも多くあり、その中のひとつひとつが尊敬するものでありました。関わったみなさまには、本当に心から御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
さて前置きが長くなりましたが、今年観た中で最も影響を受けたものは、某ビエンナーレトリエンナーレ出品のオラファー・エリアソン《Green light - An artistic workshop》です。これは今後の文章に書きたいことなのでここでは押さえますが、私自身がもともと彼の作品に対する知識がなかったためか、幾何学、自然を重視する作家とばかり思ってました。それもそれで正解ではあるのですが、彼が一番に作品の中において重要視する点が「人」であると知った時、彼の作品に対する言及は広がりを見せました。Green lightに関しては、オラファーの持ち味である幾何学という形態に取り組み・取り組ませつつ、非合理的な仕組みの中で、社会に応用する仕組みをつくる「包摂」の作用は自分自身が運営をする立場でありながら非常におもしろい試みだと感じました。
同じく非合理でいうと、ミュンスター彫刻プロジェクトの運営について。日本とドイツは真面目な点が非常に似ていると思っていながら違いを感じてました。その違いをドイツに渡った日本人作家ユニットの視点から語ると、日本は合理的であり全体主義でありながら、ドイツは民主主義であるという点。それは全体が決してそうではないということも付け加えながら、今後の日本での国際展を言及する際、一要因として見ていく必要があるのではなかろうかと感じます。

ミュンスター彫刻プロジェクトは初めて行ってみたけれども、「彫刻」プロジェクトであるという点を改めて実感しました。それはジャンル、素材としての彫刻という意味ではなく、社会「彫刻」という意味で、ケーニッヒが受けたボイスからの影響を痛感しました。個別の作品でいうと、Gerard Byrneの《In Our Time》が良くって、初めから終わりまで観ていたら帰りがけに、興奮気味の外国人のおばあちゃんに「あなたもこの作品が好き?」って声をかけられ嬉しかったです。あとは火を起こす装置のプロジェクト。この旅も2012年の、5年前のドイツと同じく忘れられないものになると思います。
あとは、2017年の目標である、今、日本が考えるべき内容を押さえた展示を行うことが達成でき、そして引き続き後続していきたいと思ってます。
さてそんなこんなで年が明けてからの執筆となりましたが、2017年ありがとうございました。
2018年もよろしくお願いします。(K)

今年の○○ in 2016

恒例の「speak alone in 2016」は、ギャラリー小柳の「かんらん舎(1980-1993):Daniel Buren / Tony Cragg / Imi Knoebel」です。今年は何回か、大谷さんとお話しする機会をいただいたのですが、独学のリサーチや興味の対象とすべきところが本当に面白くてお手本にしたい人であり、会うたびに刺激を受けました。
この展覧会のDMのデザインは大谷さんの提案で、タバコ会社「Peace」のパッケージ・デザインを用いているわけですが、その元となったのが、デザイナーであるクネーベルの子が、父(クネーベル)がダルムシュタットの美術工芸学校で朝から晩まで読んでいたという書籍のデザインを、戦後に、新たな「Peace」パッケージとして蘇らせたもの、とのこと。
大谷さんの文章は、真摯に作品と向き合う姿勢が表れていて、ビュランの意志を受け継ぐようにギャラリストの仕事に取り組む姿が印象的でした。なぜビュラン、クラッグ、クネーベルという作家が、大物作家と言われているのか。その所以を、大谷さんの個人的な史実を通して理解できたような気がします。これからも色々なお話を聞きたいです。
あと、今年は新規国際展をいくつか観たけれど心には響いてこなかったのが正直な感想。西欧化に対するアンチな意見や、日本独特の美術の確率を目指す人の意見も聞くけれど、それでも現代西欧のアプローチの仕方・思想哲学は、まだまだ学ぶべき点は多いと思います。あとは、今、日本が考えるべき内容を押さえた展示を行うことが、2017年の目標だなと。

それではみなさま、今年も本当にありがとうございました。
来年はきっと多忙。さらに多くの人との関わりを望むと同時に、そのひとつひとつの出会いを大切にしていきたいです。(K)

今年の○○ in 2015

「speak alone in 2015」。

今年は、戦後70年ということもあって戦争画や戦争をテーマにした作品や展覧会をよく目に、耳にする年となりました。残念なことは、安保法案が可決してしまったこと、戦争やテロ、難民危機などの歴史がまた新たに築かれたこと。今に限った話ではないですが、なかなか収束のつかない事態に対しては悲愴な面持ちになります。

展覧会では、行ってないけれどもバカルギエフのイスタンブールビエンナーレ14が良かったのではないかと思います。ドクメンタ13から引き続き、彼女が追い求めているものそのものについて気になるのですが、一方的な押しつけに感じなく、常に対話をしている状態の展覧会を提示する様が尊敬できます。
それとミヤギフトシさんが企画されたxyzでの展示、碓井ゆいさんの作品「empty names」がとても良かったです。この作品のおかげで、クロード・ファレールの「戦闘」を知りました。クロード・ファレールに限らず、時代の流れで消え失せた書籍、作家は沢山いると思うのですが、こうして新たなかたちでアーカイヴしていく、残していく手法はあるのだということがわかります。

書籍では、「女ひとりの巴里ぐらし」。11月に起こったパリの同時多発テロの2日前でしょうか。本屋を営んでいる書店兼友人宅に行ったときに、それはまだ値段未整理の状態でぽんと置かれていました。何か直感的に、この書籍に手招きされたような感じがあったので、まだ読んでないという主にお願いをして本を譲ってもらいました。読んでみるとこの主人公の女性と自分が同じ年齢であることに気付きました。内容も、その当時のパリでの出来事を、ところどころ今となっては差別とされるような暴言も交ざってますが、自由に描いている作品です。

映画では、小泉明郎さんのインタビューで知った木下惠介の「陸軍」やエリック・ボードレールの「マックスへの手紙」が作品として優れてましたし、紛争について考えるものもありました。こうした戦争にまつわる作品は、戦争というものが今迄一度もなければなかっただろうし、そうした意味でない方がよかったものでもあるので、作品を見て良かったと思うと同時に実際に起きた戦争に対してを考えると複雑です。

来年は少しでも多くの人が紛争の世界から離れることができますよう。
今年もみなさま、ありがとうございました。(K)

今年の○○ in 2014

Kです。びっくりするくらいあっという間の1年でもあり、何年にも感じた1年でもありました。大学のシクラメンは元気でしょうか。。

「speak alone in 2014」。
いきなり美術の話題ではないのですが、今年はソチオリンピックフィギュアスケート浅田真央選手!彼女の演技に泣かされました。あの心から心が動かされる表現力はどこからくるのでしょうか。彼女が演技を終え、そして泣いた瞬間、観ている私も心がわなわなと感無量の状態でした。それから半年が経ち、展覧会やイベントでいい作品に出会ってはいるのですが、心が揺さぶられるような感じはなかなか…。そんな中、出会えました。
mujikoboでの栄山剛士さん。一度足を踏み入れて「ああ…いいな」と感じ、後になってこの作家が友人の知り合いであると知り後日再訪してみることにしました。再訪して観てみると「やはりいいなあ…」と。これが魅せるってやつなんだと、これが美術なんだと。そんなあたりまえのことをただただ感じ、その頃「美術」や「展覧会」に対してなんとなく突っかっていた心がほぐれ、柔らかくなれました。3〜4畳ほどの小さなスペースはとても充実していて、その充実感が目から肌からしみ込んでいくようないい展示でした。
そういえば、ポレポレ座のミハイル・カリキスのイベントも良かったです。内容もそうなのですが、企画者の意識がとくに。

今年も残すところごく僅かとなりました。出会えた方も出会えなかった方も、今年もご迷惑をおかけしましたとありがとうございました。

除夜の鐘ももうすぐ…。
地元は静かに雪が降っています。(K)

お疲れさまでした!

先日、本年度をもって女子美をご退職される北川フラムさんの最終講義が行われました。本当は長々と書こうかと思ったのですが野暮ったくなるのもなんなので、ほんの一言。
フラムさん、女子美でのお仕事お疲れさまでした。次回の越後妻有も楽しみにしています!(K)